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肩こりは、同じ作業を続けていたり、不自然な姿勢をとっていたり、冷房などが肩や首に当たっていたりして、肩や首の筋肉に痛みや重苦しさが生じた状態をいいます。
特に筋力の弱い女性に多く、ひどくなると肩が動かせなくなったり、頭痛や吐き気が生じたりすることもあります。
最近は長時間のパソコン作業で、肩こりになる人が増加しています。
肩こりは首や肩の周りの筋肉の血液循環が悪くなった状態ですので、一般的には腕や首を軽く回す体操やストレッチやマッサージで、固くなった筋肉をほぐしたり、温熱パックやお風呂などで肩を温めたりすると症状が和らぎます。
また、長期間同じ姿勢でいる時は適度に休憩を入れて、そこでストレッチをするとよいです。パソコンやゲームなども、適宜目を休めることが大切です。
肩こりに対して、西洋医学では痛み止め(鎮痛薬)や炎症を取る薬(消炎薬)、筋肉の緊張をとる薬(筋弛緩薬)などを使って症状を抑えていきます。ただ、これらは対症療法で、一時的にはよくなるものの、薬を止めるとまたぶり返してしまいます。
漢方では患者さんの自覚症状や体質に合った処方を使用することで、肩こりの根本的な改善が期待できます。もちろん、日常生活の改善も重要です。
上記のような肩こりを起こしやすい生活環境をそのままにしておいては良くありません。
実際の漢方処方では、一時的に使う対症療法と、体質改善のためにしばらく服用を続ける根治療法があります。
肩こりは、僧帽筋やその周辺の筋肉の疲労・緊張によって起こります。
俗に言う「四十肩」「五十肩」など腕を上げたりすると痛む状態は主に肩関節の炎症を主として考えますので、肩こりの治療とは別になります。(一部どちらにも使う処方がありますが・・・。)
ちなみに五十肩などに良く使用する漢方薬は、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)・葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)・二朮湯(にじゅつとう)などです。
ただ、肩こりは慢性的な症状ですから、 一時的に症状を和らげても再び症状がぶり返してしまいます。
したがって漢方では、その人の体質や原因を改善して慢性症状を取ることを 目的に治療を進めることがあります。
肩こりの場合では、 肩の周辺の血流障害や精神的なストレスが原因で起こることが多いので、 血液循環をよくする漢方薬、緊張を和らげる漢方薬などを服用していきます。
・冠元顆粒(かんげんかりゅう)
血流改善により、筋肉をほぐす働きがあります。肩こり以外にも血行不良による頭痛・めまいや慢性病による血流障害を改善していく漢方薬としてもよく使用されます。
・柴胡剤(柴胡桂枝湯・小柴胡湯・大柴胡湯など)
ストレスなどにより緊張した筋肉をほぐす働きがあります。肩こりだけでなく背中の筋肉のこりや張りにもよく使用されます。
・葛根湯・桂枝加葛根湯
主に首筋とそれに連なる肩の筋肉が凝った状態に使用します。これらの処方は、首筋がゾクゾクして、こわばった状態の風邪の初期にも効果がある漢方薬です。
・加味逍遙散
主に婦人科系の症状(月経不順や月経前症候群など)もある方の肩こりによく使用されます。
漢方薬は体質や症状に合った処方を選ぶことが大切です。
また、漢方薬と併用してビタミンB1製剤・無臭ニンニク製剤などを服用することで、より肩こりが改善しやすくなることもあります。
鍼灸の治療も効果的です。家庭でも肩こりに良いツボを指圧などすると良いです。
○肩井(けんせい)
肩こりのツボとして定番の部位です。首のつけ根と肩先を結ぶ線の中央。または、乳頭からまっすぐ上に上がり、肩の一番高いところ。
○肩外兪(けんがいゆ)
前方から手のひらを反対側の肩に当てて、中指の先が当たる骨の内側(肩甲骨の内側の上端のへこんだ部分)
これらを指圧したり、温灸やマグレイン・パッチタン・ピップエレキバンなどを貼ると良いでしょう。
体調・症状にあった漢方薬を服用していくことにより、少しずつ症状が楽になっていきます。
また、日常生活では、肩の周りの筋肉をほぐすため、時間のあるときには肩を上下に動かしたり、腕をゆっくり回してください。
コーヒーの飲み過ぎも肩の筋肉をこわばらせる可能性があります。
肩こりが辛く、1日3杯以上コーヒーを服用している方は、試しに2週間コーヒー断ちをしてみてください。2週間止めても肩こりに変化がない場合は、コーヒーの影響は低いと考えます。