新型コロナウイルスに感染するよりもカゼやインフルエンザに罹る比率の方が数百倍多いのですが、初期症状が似ているので、カゼやインフルエンザであっても新型コロナウイルスに感染したのではないか?と不安を抱いてしまいます。
国の指針では、次のようになっています。
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発熱など不調を起こした方は、会社や学校は休み、自宅で安静にするようにと言っており、以下の場合は、最寄りの保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター」にお問い合わせください
・ 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合、
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むやみに受診して、感染を拡大させるのを防ぐための方法なのでしょうが、その間に病状が進行してしまう可能性もあります。
新型コロナウイルスに対して直接効果があるとは言えませんが、漢方薬によって病状を悪化させない、病気の改善を早めるということは可能だと思います。
漢方薬の対処は、基本的に症状からの判断を重視して処方を決めていきます。
症状・病状が同じであれば、新型コロナウイルスであっても、カゼやインフルエンザであっても処方は同様です。
新型コロナウイルスとカゼと同じ治療ではおかしいと思われるかもしれませんが、漢方医学では、過去数百回起こったとされる疫病(伝染病)も同様な治療で乗り越えてきました。
中国の新型コロナウイルス(COVID-19)に対して、中国では「清肺敗毒湯(せいはいはいどくとう)」という漢方薬を軽症から重症まで幅広く使用して、効果を上げたという報告があります。
この処方(煎じ薬)の内容は,麻黄9g,炙甘草6g,杏仁9g,生石膏15g,桂枝9g,沢瀉9g、猪苓9g,白朮9g,茯苓15g,柴胡16g,黄芩6g,姜半夏9g,生姜9g,紫苑9g,冬花9g,射干9g,細辛6g,山薬12g,枳実6g,陳皮6g,藿香9gとなっています。
この処方を見ると、麻杏甘石湯,五苓散,小柴胡湯,射干麻黄湯,茯苓飲、藿香正気散などが組み合わさった配合になっています。
入院患者300名弱の病院では、患者さんの状態一人一人に対応することは困難であったため、上記のような多くの処方の組み合わせで病気の経過や病状の違う患者さん達に幅広く効くように処方されたようです。
したがいまして、発熱、咳、だるさなどの症状が起き始め、自宅待機をするような状況では、清肺敗毒湯のような処方よりも初期対応として適した処方がよいと考えます。
具体的には、2009年の新型インフルエンザの際に中国で開発された連花清瘟カプセル(連翹・金銀花・炙麻黄・炒苦杏仁・石膏・板藍根・錦馬貫衆・魚腥草・広藿香・大黄・紅景天・薄荷脳・甘草)の構成に近い,麻杏石甘湯(まきょうかんせきとう)と銀翹解毒散(ぎんぎょうげどくさん)を組み合わせがよいと考えています。
(連花清瘟カプセルは、日本で購入することはできません)
ただ、漢方医学は自覚症状を重視して治療することが大切ですので、一般的な自覚症状と違う場合には処方を変更することも考慮します。
例えば、寒気がひどい場合は、麻杏甘石湯ではなく、麻黄湯(まおうとう)と銀翹解毒散との組み合わせを考慮したり、胃腸の不調がある場合は、藿香正気散をベースに処方を検討するとよいと考えます。
上記の処方は新型コロナではなく、カゼやインフルエンザであっても使用できますので、発熱、咳、だるさなど、体調がおかしいと感じたらすぐにご服用いただくと良いです。
気になる方は、お近くの漢方に詳しいお医者さんや漢方薬局さんにご相談になって、お手元に常備しておかれるとよいでしょう。
(昔の日本人が、カゼなどの不調の時はすぐに病院へ行かずに家庭にある救急箱の薬で初期治療をしたことを実践するとよいと思います。)
ご紹介した漢方薬は、カゼやインフルエンザの際によく使用する処方ですが、新型コロナに効くと日本で認可されたものではありません。その点をご承知ください。
中国、韓国、台湾では漢方治療を行っています。ご興味ある方はこちらをご覧下さい。
【緊急寄稿】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方の役割(渡辺賢治ほか)
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14426
漢方相談 明正薬局
薬剤師 福本哲也