漢方では尿もれ(尿失禁)は内臓の機能低下(気虚・中気下陥)や老化からくる腎経の衰え(腎気不固)などを主な原因と考えます。また、急性の場合などで膀胱に熱をもつ状態により起きる場合もあります。
○中気下陥(ちゅうきげかん)-尿漏れ、疲れやすい、元気がない、顔色が白い、食欲不振、下腹部の下墜感、便が緩いなど
代表処方-補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)など
○腎気不固(じんきふこ)-尿漏れ、頻尿で量が多い、元気がない、疲労倦怠感、足腰がだるい、手足が冷えるなど
代表処方-至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)、八仙丸(はっせんがん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)など
○膀胱湿熱(ぼうこうしつねつ)-尿漏れ、尿が黄色い、濁る、排尿時の灼熱感など
代表処方-八正散(はっしょうさん)、五淋散(ごりんさん)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)など
日常生活において
○骨盤底筋体操をしましょう。
・骨盤底筋体操は、尿道を締める骨盤底筋群※を鍛えて、尿もれを予防、改善する体操で、腹圧性の尿もれに効果大です。
お通じやおしっこを我慢するような感じで肛門や尿道、膣を縮めます。肩に力が入ったり、息を止めたりしないように注意しましょう。
10回で1セット。予防には1日5セット、改善には1日5~8セットを目標に、毎日続けましょう。特別に時間をとらなくても、電車やバスに乗っているとき、家で横になってくつろいでいるときなどに手軽にトライしてみてください。
※骨盤底筋群:骨盤の底にあって、恥骨から尾骨までの間をハンモックのように下から臓器を支え、尿道や肛門を締める働きをしている筋肉群
あお向けに寝て
●あお向けに寝て、脚を肩幅に開き、膝を立てます。身体の力を抜き、肛門と膣をキュッと締め、そのままゆっくり5つ数えます。そして、ゆっくりと肛門と膣をゆるめます。
●10回で1セット。
●おやすみ前にベッドの上で。テレビを見ながらでもできます。
椅子に腰掛けて
●床につけた脚を肩幅に開きます。背中をまっすぐ伸ばし、顔を上げます。肩の力を抜いて、おなかが動かないように、そしてお腹に力が入らないように気をつけながら、肛門と膣をキュッと締め、そのままゆっくり5つ数えます。そして、ゆっくりと肛門と膣をゆるめます。
●10回で1セット。
●電車やバスに乗っているときや、オフィスのデスクに座っているときにもできます。
机にもたれて
●脚と腕を肩幅に開き、手は机につきます。全体重を両手にかけて、背中をまっすぐ伸ばし、顔を上げます。肩とおなかの力を抜いて、肛門と膣をキュッと締め、そのままゆっくり5つ数えます。そして、ゆっくりと肛門と膣をゆるめます。
●10回で1セット。
●台所や洗面所でも手軽にできます。
骨盤底筋体操以外にも、腹筋を鍛えることや、スクワット(脚を肩幅に開き、膝をゆっくり曲げて腰を落とす動作を繰り返す運動)などのエクササイズもおすすめです。
飲食物について
冷たいものや生ものなどは内臓を冷やし、尿利異常(頻尿)を起こしやすくします。
また、胃腸の弱い方は、冷たい物以外に、油ものや甘い物の取り過ぎは胃腸に負担をかけるので、なるべく控えめにしましょう。