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漢方医学では、ぜんそくの原因を気候の変動、細菌、ウイルスなどの外邪による外感病(体の外側からの原因)と、肺(呼吸器)の機能不足(気虚)、機能不調(気滞)、潤い不足(陰虚)、水分代謝の不調(痰飲)などの内傷(体の内側の病気の原因)と捉えています。
そして原因と症状にあった治療法をとっていきます。
明正薬局では、ぜん息に対して、咳や喘鳴などの症状が頻繁に起きているときには、症状改善のための対症療法を主体的に行い、症状が落ち着いてきているおきには、ぜん息が起きなくなる根本治療を主体にしていきます。
症状改善のための対症療法は、大きく4つのタイプに分けて考えます。
肺寒とは、体質的な冷え症や外から冷えや寒さを受けるなど、体(肺経)が冷えた状態のぜん息をいいます。
症状は、咳や呼吸が苦しい(ヒューヒュー、ゼーゼー)、水様性のたんや鼻水など、分泌物がうすいのが特徴です。寒さや冷えると症状が悪化します。
○代表処方
麻黄湯(まおうとう)
寒気が強く、咳が激しい、頭痛や身体のふしぶしが痛く、汗が出ていないもの
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出る
蘇子降気湯(そしこうきとう)
体力虚弱で、足冷え、顔ののぼせ、息苦しさ、息が吸いづらい、
苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)
胃腸が弱く、冷え症で薄い水様のたんが多いもの
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
体力虚弱で、手足に冷えがあり、咳や呼吸の苦しさ、ときに悪寒があるもの
肺熱は、体質的に熱・炎症をもちやすく、ウイルスや細菌の影響で肺が熱をもつことによって起こるぜん息をいいます。
痰が黄色く粘り気を帯びているのが特徴で、温まると症状が出やすくなります。
○代表処方
麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
咳が出て、黄色く粘る痰がある、痰が切れにくい。
五虎湯(ごことう)
咳が出て、黄色く粘る痰がある、痰が切れにくい。麻杏甘石湯に桑白皮を加えたもの
竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)
熱っぽさがあり、黄色い痰がでて、気分がさっぱりせず、安眠が出来ないもの
陰虚肺熱とは、からだ・特に肺経(呼吸器)の潤い不足と熱症状が起きた状態です。
ぜん息症状(咳や呼吸の苦しさ)以外に、痰は少ない、粘りが強く切れにくい、喉の乾燥や痛み、微熱、寝汗などの潤い不足とそれによる熱症状が起きることが多いです。
○代表処方
滋陰降火湯(じいんこうかとう)
体力虚弱で、のどにうるおいがなく、たんが切れにくくてせきこみ、皮膚が浅黒く乾燥し、便秘傾向
麦門冬湯(ばくもんどうとう)
たんが切れにくく、ときに強くせきこむ、咽頭の乾燥感、からぜき、しわがれ声
清肺湯(せいはいとう)
せきが続き、たんが粘って切れにくい、多くて切れにくい、体のほてり、喉の痛み、微熱、手足のほてり、など(陰虚では、痰が少ないことが多いのですが、清肺湯は痰が多く粘る場合に良いです。)
過度のストレス、長期にストレスにより、肺の呼吸機能が乱された状態です。
ぜん息症状以外に、イライラ、憂うつ、のどのつまり感、食欲にムラがある、お腹が張る、眠りが悪いなどの症状がみられます。
○代表処方
神秘湯(しんぴとう)
せき、喘鳴、息苦しさがあり、イライラ、ストレスにより不調が悪化
柴朴湯(さいぼくとう)
せき、喘鳴、気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、かぜをひきやすく、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う
ぜん息を起こす体調として、漢方医学では肺経(呼吸器)・脾経(消化器)・腎経(免疫・ホルモン分泌)のいずれかの機能失調があるとみて、失調している臓腑を改善する治療を行います。
よく風邪をひく、汗をかきやすい、寒がりで暑がり、気温の変化などですぐくしゃみがでるなど、体表の防衛機能が弱い
表衛(皮膚・粘膜)の強化-過敏になっている粘膜を丈夫にしていきます
補肺湯(ほはいとう)
慢性のせき、息切れ、しわがれ声、疲れやすい、元気がない、汗をかきやすい
玉屏風散(ぎょくへいふうさん)、桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)など
胃腸が弱い、食欲不振、胃もたれ、下痢、軟便、便秘、疲れやすい、むくみ、痰、鼻水などの症状があります。
これは、消化器の力が弱く、栄養の消化吸収能力が弱く、体内に不要な水分が停滞しやすい状態です。
喘四君子湯(ぜんしくんしとう)
体力虚弱で、胃腸の弱いものの次の諸症:気管支ぜんそく、息切れ
香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)、参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)など
発育不良、髪に艶がない、歯が弱い、耳鳴り、中耳炎になりやすい、風邪を引きやすく、治りにくい、足腰がだるい、頻尿、逆に尿が出にくい、尿漏れなど。
八仙丸(はっせんがん)
疲れやすく胃腸障害がなく、ときにせき、口渇、下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ、息切れ、からぜき
至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)など
肝経は情緒などの精神神経や自律神経などをコントロールしており、ストレスなどで肝経が乱れるとアレルギー症状が強く出やすくなります。
・肝経が乱れて起こりやすい症状
イライラしやすく、ストレスが強い、眠りが悪い、胃腸の不調、肩こり、頭痛、脇腹の張り、など
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、抑肝散加陳皮半夏(よっかんさんかちんぴはんげ)など
・粘膜の強化、抗アレルギー作用のあるクマザサエキス
ササヘルス