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更年期障害(こうねんき しょうがい、 PMS)とは、卵巣機能の低下による女性ホルモン(エストロゲン)欠乏に基づくホルモンバランスの崩れにより起こる様々な症状(自律神経失調症と類似の症状)が起こることをいいます。
その症状は個人差が大きく、人によっては、仕事や家事など日常生活に差し支えることもあります。
起きやすい症状は、ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)、多汗、動悸、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、不眠、疲労感、頻脈、血圧の変動、のどの渇き、のどのつかえ、息切れ、下痢や便秘、月経不順、性交痛、筋肉痛、舌痛など人によって様々です。
そして、精神症状として情緒不安定、不安感、イライラ、ゆううつ感、落ち込みなどの症状も起きやすくなります。
自律神経障害症状
熱感(顔面紅潮、のぼせ)、冷感(さむけ)、発汗、動悸(ドキドキ)、脈拍が早くて不快感、頭痛(頭重)、
知覚異常、睡眠障害、耳鳴、めまい
精神障害症状
精神不安定(神経過敏)、憂うつ(抑うつ)、怒りっぽい(かんしゃく)、やる気が起きない、記憶力 減退(もの忘れ)
身体・代謝障害症状
皮膚異常感(かゆみ、蟻が這っているような不快感)、口内乾燥感(口渇感)、唾液が多い、
肩こり、腰痛、関節痛、筋肉痛
頻尿、排尿痛、残尿感、性交障害、外陰部のかゆみ・不快な帯下(おりもの)
食欲不振、吐き気、嘔吐、便秘、下痢、腹痛
そのほかの症状:疲労感、その他
・婦人科での治療はホルモン補充療法が基本
現代医学での治療は、足りなくなった女性ホルモンを補う「ホルモン補充療法」が基本です。
成熟した女性の卵巣からは「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンが出ていますが、閉経時期を迎えると、これらのホルモンが減少していきます。
特に更年期障害の原因となっているのは「エストロゲン」の不足です。そのため、エストロゲンを補うことで更年期障害の症状を改善する方法がホルモン補充療法です。
エストロゲンを補う方法として、注射・飲み薬・貼り薬(パッチ剤)・塗り薬(ジェル剤)があります。
一般的によく使われているのは飲み薬とパッチ剤です。パッチ剤の良い点は、飲み薬と違って肝臓の機能があまりよくない方でも使えるという点で、欠点は2日ごとにシール上のホルモン剤を貼るので皮膚が弱い方はかぶれたり痒くなってしまうことがある点です。
また、更年期障害の改善のためだけであれば「エストロゲン」を補うだけでいいのですが、子宮がある状態でエストロゲンのみを補い続けると、子宮体がんのリスクが高くなってしまうという欠点があり、通常はエストロゲンと一緒に「プロゲステロン」の配合された処方を使用します。
ホルモン補充療法の注意点は、長く続けていると乳がんのリスクがわずかに高くなることや、薬による肝臓への影響が出ていないかを定期的にチェックする必要があることなどです。
現代医学での治療が、誰に対しても同じ方法が用いられることに対して、漢方医学ではその方の体質や症状に応じて適する漢方薬を調合していく方法がとられます。
漢方医学では、体内の気・血・水の状態や婦人科系と関係の深い肝経・腎経を調整して、更年期障害を治療していきます。
当薬局で、更年期障害によく使用する代表的な漢方薬をご紹介します。
ちょっとしたことでイライラや落ち込みがあり、メンタルが不安定で、顔のほてり・のぼせが起きやすい、胸やお腹が張ったり、便通が不安定になる。肩こりや不眠なども起きやすい。
代表処方-加味逍遙散(かみしょうようさん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)など
漢方で言う気の巡りを良くしながら、上部へ上がった熱を冷ます働きがあります。
実際はファイトロゲン(大豆イソフラボン+チャガ+ミネラル)や珉好(みんはお)などを併用すると働きが良くなります。
めまいやふらつき・立ちくらみなどが起きやすく、精神的に不安感なども起きる
代表処方-連珠飲(れんじゅいん)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)など
漢方医学で言う気・血・水のバランスを整える働きがあります。
手足のほてりが気になり、体もだるい(特に下半身)、寝汗もかきやすい状態
代表処方-知柏地黄丸(ちばくじおうがん)、黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)など
漢方医学でいう腎陰を補いながら、ほてりやだるさを改善します。
更年期障害を改善していくには、漢方医学でいう「腎」「肝」の働きを良くすることや体の中を流れる気・血・水の状態を改善していくことが重要です。
お体をしっかり整えるのにしばらく漢方薬を服用していただくことが大切です。