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前立腺肥大症では、排尿症状(排尿困難をはじめとする、尿を出すことに関連した症状)、蓄尿症状(尿を貯めることに関連した症状)、排尿後症状(排尿した後に出現する症状)がみられます。
排尿困難とは、尿が出にくい症状の総称ですが、「尿の勢いが弱い」、「尿が出始めるまでに時間がかかる(尿を出したくでもなかなか出ない)」、「尿が分かれる(尿線が分かれて出る)」、「排尿の途中で尿が途切れる」、「尿をするときに力まなければならない」などの症状があります。
前立腺肥大症では、多くの場合頻尿がみられます。
頻尿については、一日に何回以上という定義はありませんが、一般的には以下の場合が頻尿を考えられます。
また、尿意切迫感があって、トイレまで間に合わずに尿が漏れてしまうような症状を、「切迫性尿失禁」と言います。
尿意切迫感があり、頻尿を伴うものを過活動膀胱といいますが、前立腺肥大症の患者さんの50~70%が過活動膀胱を合併します。
過活動膀胱では、まだ膀胱に十分尿が貯まっていないのに、膀胱が勝手に収縮してしまうので、すぐに排尿したくなってトイレに行く、つまり頻尿になります。
前立腺肥大症で、排尿後に膀胱内に尿が多量に残るようになると、膀胱に貯められる尿量が減って、結果的に頻尿になる場合もあります。
「残尿感」とは、排尿後に「どうもすっきりしない」、「尿が残っているような感じがする」といった感じのことです。また、尿が終わったと思って、下着をつけると尿がたらたらっともれて下着が汚れることがありますが、これを「排尿後尿滴下」と言います。
漢方では前立腺肥大は老化からくる腎経の衰えを主な原因と考えます。また、症状により体を温める処方と体内(腎膀胱系)の炎症(熱)を鎮める処方を検討します。
○腎陽虚(じんようきょ)-排尿に時間がかかる、頻尿、元気がない、疲労倦怠感、足腰がだるい、手足が冷えるなど
代表処方-八味地黄丸(はちみじおうがん)、至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)、参馬補腎丸(じんばほじんがん)など
○腎陰虚(じんいんきょ)-排尿に時間がかかる、頻尿、元気がない、手足のほてり、疲労倦怠感、足腰がだるい、口の渇き、寝汗、など
代表処方-知柏地黄丸(ちばくじおうがん)、八仙丸(はっせんがん)、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)など
○膀胱湿熱(ぼうこうしつねつ)-排尿に時間がかかる、排尿時の不快感や痛み、灼熱感、尿が黄色い、濁る、など
代表処方-八正散(はっしょうさん)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、五淋散(ごりんさん)など
その他 ノコギリヤシが前立腺肥大に効果的である人もいます。
漢方薬とノコギリヤシ製剤と併用するのも良いでしょう。