私ども明正薬局では、不妊症の漢方的なタイプを大きく7つに分けて、それに合った治療を行っています。
今回は、不妊症のタイプで相談の多い体の冷え・年齢が高い方に多いタイプ(腎陽虚)
をご紹介します。
目次
(腎陽虚)
子宝に恵まれるためには、子宮や卵巣の働きが整って、女性ホルモンの分泌も正常であることが大切です。
人の成長発育・生殖機能の発達は、漢方医学では腎(じん)の働きによると考えられています。両親から受け継いだ生命エネルギー(先天の精)は腎で蓄えられ、食べ物や空気から得られた気(後天の精)を補充して力を増していき、生殖能力が高まっていきます。
この腎の機能の善し悪しが、生殖器や各種ホルモンの働きを左右し、生理周期・妊娠のしやすさと関係します。
漢方医学でいう「腎」とは、人の生命エネルギーを蓄えている場所で、小水の調節(泌尿器)・女性ホルモンや男性ホルモンなど内分泌系の調整と活動にとって不可欠なエネルギーやその働きをさします。
腎の働きは、
などです。
すなわち、腎の充実=成長、腎の衰え=老化です。
人が産まれて成長してくると、毛髪が増え、足腰が力強く、骨格がしっかりしてきます。そして、女性なら生理が始まり、子供をもうけることができるようになります。やがて、年を取っていくと生理が乱れ、やがて止まり、髪は抜け腰や骨が弱くなり、耳の聞こえが衰えていきます。
腎の衰えは、年齢以外に過労や過度の性生活などでも起こっていきます。
参茸補血丸(さんじょうほけつがん)
至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)
海馬補腎丸(かいまほじんがん)
八味地黄丸(はちみじおうがん)など
不妊症の漢方相談は、伊豆の国市以外に伊豆半島全体や三島、沼津、静岡、横浜、名古屋などからも患者さんが相談にいらっしゃいます。
また、メール相談により、北海道から九州・沖縄まで漢方薬を発送しております。
【症例1】38歳女性・静岡県三島市在住・不妊歴5年・妊娠歴0回・身長157cm・体重46kg・会社員
病院で4年治療。人工授精を5回、体外受精を3回行うも一度も妊娠せず、漢方で体調を整えて不妊治療をしたいとのことで当薬局に来局されました。
症状
月経周期が長い(35~40日)、月経期間は3日間(3日目の出血はごく少量)、足が冷えだるくなる、腰が冷えて痛むことがある。夜間尿1~2回、頭のふらつき、疲れると耳鳴りがする。寝ても疲れがとれない、顔色が悪い、目の下にクマができる、髪が抜けやすい、冷房に弱い、など。
処方
全周期にわたって、煎じ薬(八味地黄湯+補腎陽薬)+参茸補血丸(さんじょうほけつがん)
月経期-月経3日間、血行改善の生薬(紅花、益母草、莪朮、三稜)
低温期-月経4日目から排卵までヴァイタルゲン(牡蛎肉+クマ笹)を併用。
高温期-高温になってから月経がくるまでプラセンタ製剤を併用。
経過
初めの数日は煎じ薬を作るのが手間に感じたが、その後慣れました。
服用1ヶ月後、体が温まる感じ。夜中のトイレが減りました。
服用3ヶ月後、月経の周期が33日だった。月経の量が増えました。
服用4ヶ月後、病院で採卵4つ。そのうち3つ受精。(漢方を服用する前は2つしかとれず、1つも受精しませんでした。)
服用6ヶ月後、受精卵をもどし、その後、妊娠を確認。
妊娠を安定させる漢方薬を安定期(16週)まで服用し、その後無事女の子を出産。
冷えや、夜間尿、疲れ、腰痛などが改善してきたことで漢方薬を信頼して服用を続け、そして採卵と受精卵の状況が良くなったことで、前向きに自信も出て気持ちの安定にも繋がったことが良かったようです。
【症例2】40歳女性・静岡県田方郡函南町在住・不妊歴1回・妊娠歴0回・身長162cm・体重54kg・会社員
一昨年結婚し、去年から病院で不妊治療を始めた。今まで人工授精を3回したが、妊娠できていない。病院ではステップアップを勧められている。
漢方薬で妊娠した友人の紹介で明正薬局に相談にみえました。
症状
月経周期は30~35日、月経痛はあまりない、出血は4~5日間あるが、4日目から量が極端には少なくなる、疲れやすい(特に足腰がだるくなる)、食欲がない、軟便ぎみ、眠りが浅い、夜間尿1~2回あり冷えと関係ありそう。朝すっきり起きられない。足(足首)が冷えやすい、めまいや立ちくらみがある。むくみやすい、顔色が悪い、など。
処方
全周期にわたって、人参当芍散(にんじんとうしゃくさん)+至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)
低温期-月経4日目から排卵まで亀鹿仙(きろくせん)を併用。
高温期-高温になってから月経がくるまでプラセンタ製剤を併用。
経過
服用1ヶ月後、すこし体が温まる気がする。足腰の怠さが軽くなった気がする。
服用2ヶ月後、夜間尿に起きない日がある。むくみが気にならなくなった。
服用3ヶ月後、体調は良い感じ。月経の量はまだ少ないようだ。
服用5ヶ月後、体調が良くなってきているので、病院の体外受精を検討している。
服用6ヶ月、月経が遅れ、妊娠検査薬で陽性。病院で妊娠を確認。
安定期まで妊娠中に良い漢方薬と栄養剤を服用。
ステップアップを検討しているうちに自然妊娠できました。
静岡県伊豆の国市古奈426-6
漢方相談 明正薬局
薬剤師・国際中医A級 福本哲也
無月経、生理周期があまりにも不定の方は、まず、ある程度生理の周期を整える必要があります。
また、子宮や卵巣の炎症が強い場合にも、そちらの治療を優先して行う必要があります。
以上が周期療法の大まかな説明ですが、なかなか赤ちゃんが出来ない場合は女性側だけの問題という場合は少なく、男性側にもなんらかの不調がある場合が多いので、男性の精子(数や活動率)の状態を調べていない方はできれば一度調べられることをお勧めします。
実際の治療では、どちらか片方の方だけ、漢方治療をするよりも、ご夫婦ふたりでそれぞれにあった漢方薬を服用する方が妊娠率は高まります。