私ども明正薬局では、不妊症の漢方的なタイプを大きく7つに分けて、それに合った治療を行っています。
今回は、不妊症のタイプのうちのストレスが強い・イライラ・月経が不安定なタイプ(肝鬱気滞・かんうつきたい)をご紹介します。
目次
肝鬱気滞(かんうつきたい)
月経周期が不安定(長かったり短かったり)・基礎体温がギザギザ・月経痛が強い、イライラ、気持ちの落ち込みが起きやすい、月経前の胸の張りが強い、不眠、頭痛、肩こり、食欲にムラがある、お腹が張る、便秘や下痢などの症状が特徴です。
このタイプの方は、人に八つ当たりをして、その後に後悔して落ち込みます。
子育てにも忙しい二人目不妊の方にも多いです。
この場合、漢方医学でいう「肝」の状態を整えて、自覚症状を良くして不妊症を改善していくことが大切です。
漢方医学でいう「肝」は血を蔵し、生理周期の安定に大切な働きをもつ内臓です。
また、肝は精神神経や自律神経を整える働きも持ち、情緒・精神状態と内臓の働きをコントロールしています。
臨床では、柴胡、香附子、川芎などの生薬を配合した漢方薬を使用します。
逍遙散(しょうようさん)
加味逍遙散(かみしょうようさん)
香蘇散(こうそさん)
頂調顆粒(ちょうちょうかりゅう)など
不妊症の漢方相談は、伊豆の国市以外に伊豆半島全体や三島、沼津、静岡、横浜、名古屋などからも患者さんが相談にいらっしゃいます。
また、メール相談により、北海道から九州・沖縄まで漢方薬を発送しております。
【症例1】32歳女性・静岡県伊豆市在住・不妊歴2年・妊娠歴2回・流産1回、出産歴1回、身長160cm・体重57kg
4年前に出産。その後二人目を望むもなかなかできずに、病院で人工授精3回行うも妊娠できず、体外受精を勧められたが経済的な負担もあるため躊躇しているところ、明正薬局を紹介され漢方薬を服用することにしました。
症状
月経周期が不安定(23~32日くらい)、月経期間は3~5日間、月経痛が強く鎮痛剤を服用する、月経前の胸の張り、乳首が痛む、イライラが強いのが気になる。結婚や出産などの環境の変化でストレスを感じている。
ストレスが強くなるとお腹の張りや胸が苦しくなる、肩こりや頭痛もよく起きる。
疲れているけど眠れないことが多い。夢をよく見る。
同行したご主人曰く「イライラが強まるので、今が生理前だと分かります。」
処方
全周期にわたって、逍遙丸(しょうようがん)+酸棗仁湯(さんそうにんとう)
月経期-月経3日間、桂枝茯苓丸
低温期-月経4日目から排卵までヴァイタルゲン(牡蛎肉+クマ笹)を併用。
高温期-高温になってから月経がくるまでプラセンタ製剤を併用。
経過
服用1ヶ月後、イライラが減った気がする。眠りやすくなった。
服用2ヶ月後、生理前の不調が減ったように思う。同行しているご主人も同意。
服用4ヶ月後、ここのところ、月経が30日前後に来るようになった。
服用6ヶ月後、自然妊娠を確認。
【症例2】31歳女性・愛知県名古屋市在住・不妊歴2年・体外受精1回・妊娠歴0回・身長162cm・体重58kg・会社員
2年前に結婚。すぐに子供が欲しかったのでタイミングをはかろうとしたが、月経周期や排卵時期が不規則なのでうまくいかなかった。その後人工授精と体外受精も行ったが妊娠できない。病院では少しプロラクチンが高いと指摘された。
症状
月経周期は24~30日くらい、たまに月経が来ない月がある。月経痛だけでなく排卵痛もある。仕事や家庭(主に義理の両親)でのストレスを感じる。
月経は固まりが混じる、月経前の胸の張りが強く痛む、イライラも強い、些細なことで怒って、後で後悔することが多い、食欲にムラがあり、便通も不安定、肩こりは常にあり、頭痛やめまいもときどき起こる、など。
処方
全周期にわたって、加味逍遙散(かみしょうようさん)+香蘇散(こうそさん)+炒り麦芽
月経期-折衝飲(せっしょういん)
低温期-月経4日目から排卵までヴァイタルゲン(牡蛎肉エキス)を併用。
高温期-高温になってから月経がくるまで参茸補血丸(さんじょうほけつがん)を併用。
経過
服用1ヶ月後、あまり変化を感じない。
服用2ヶ月後、少しイライラが軽くなった気がする、便通や眠りが良くなっているようにも感じる。
服用3ヶ月後、月経前の胸の痛みやイライラが軽くなっているようだ。余談だが夫婦喧嘩も減った。
服用5ヶ月後、体調が良くなっているようなので、次の月経が来たら再度病院へ受診する予定。その後、月経が来ず、妊娠が判明。
つわりがひどく、体調が良くないため、妊娠中の体調を整える漢方薬を服用して、つわりもなくなり、安定期に入って漢方薬を終了。
その後、元気な男の子を出産。
静岡県伊豆の国市古奈426-6
漢方相談 明正薬局
薬剤師・国際中医A級 福本哲也
無月経、生理周期があまりにも不定の方は、まず、ある程度生理の周期を整える必要があります。
また、子宮や卵巣の炎症が強い場合にも、そちらの治療を優先して行う必要があります。
以上が周期療法の大まかな説明ですが、なかなか赤ちゃんが出来ない場合は女性側だけの問題という場合は少なく、男性側にもなんらかの不調がある場合が多いので、男性の精子(数や活動率)の状態を調べていない方はできれば一度調べられることをお勧めします。
実際の治療では、どちらか片方の方だけ、漢方治療をするよりも、ご夫婦ふたりでそれぞれにあった漢方薬を服用する方が妊娠率は高まります。