私ども明正薬局では、不妊症の漢方的なタイプを大きく7つに分けて、それに合った治療を行っています。
今回は、不妊症のタイプのうちのむくみ・ぽっちゃり・水分過剰タイプ(痰湿・たんしつ)をご紹介します。
人の体の6割は水分だといわれており、水分がうまく体で使われていることが生殖器系にとっても重要です。
水分代謝が悪くなると、必要なところに水分の潤いが行かずに、不要な所に水が停滞してしまいます。
目次
月経周期が長い、普段からオリモノが多い・なかなか排卵しない、顔や足がむくむ、冷え症、胃腸が弱い、軟便傾向あるいはスッキリ便がでない、体重が減らない、雨の日は頭重やめまいなどの不調が起きやすい、口が粘る、水分をたくさん取ると調子が悪いなど、体の水分代謝が悪い症状が特徴です。
このタイプの方は、ポッチャリ体型で多嚢胞性卵巣を指摘される方に多いようです。
体の水の巡りが悪くなるのは、漢方医学でいう「脾胃(消化器系)」や「腎(泌尿・生殖器系・ホルモンバランス」の働きが悪くなっているからだと考えられます。
臨床では、①半夏、蒼朮、陳皮、茯苓、防已など利水薬を中心に、②脾胃を整える漢方薬や③腎を改善する漢方薬を組み合わせて処方をします。
①利水化痰薬
温胆湯(うんたんとう)・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)・平胃散(へいいさん)など
②補気健脾薬
六君子湯(りっくんしとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)など
③補腎薬
至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、海馬補腎丸(かいまほじんがん)など
不妊症の漢方相談は、伊豆の国市以外に伊豆半島全体や三島、沼津、静岡、横浜、名古屋などからも患者さんが相談にいらっしゃいます。
また、メール相談により、北海道から九州・沖縄まで漢方薬を発送しております。
【症例1】36歳女性・静岡県伊豆市在住・不妊歴3年・妊娠歴1回・出産歴1回、身長163cm・体重75kg、自営業
4年前に出産。その後二人目を望むもなかなかできない、病院で人工授精を行ったが妊娠できず、漢方薬で不妊症が治ると聞き、来局。
症状
月経周期が遅い(32~35日くらい)、月経期間は3~5日間、月経の量は少ない気がする、普段からオリモノが下りるのが気になる。月経痛はひどくない(腰がだるくなる程度)、むくみ、体のだるさ、雨の日に頭痛やめまいが起きやすい、甘い物が好きだがもたれやすい。便は柔らかめ。一人目の妊娠は人工授精。
処方
全周期にわたって、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)+至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)
月経期-月経3日間、桂枝茯苓丸
低温期-月経4日目から排卵までヴァイタルゲン(牡蛎肉+クマ笹)を併用。
高温期-高温になってから月経がくるまでプラセンタ製剤を併用。
経過
服用1ヶ月後、大きな変化は感じないが、頭痛が減ったようだ。
服用2ヶ月後、体のだるさ、むくみが軽減している。
服用4ヶ月後、体調がよい。普段のオリモノが減っている。
服用6ヶ月後、月経が30日前後に来るようになった。
服用10ヶ月後、自然妊娠を確認。
【症例2】28歳女性・静岡市在住・不妊歴1年・妊娠歴0回・身長152cm・体重62kg・会社員
2年前に結婚。そろそろ子供が欲しいが、体調が良くないと子供ができてからも大変と聞いているので、体調改善を先に行いたい。まだ婦人科には受診していない。市販の排卵検査薬を使って排卵のタイミングだけ行っている。
症状
一番気になるのが頭痛。十代の頃から頭痛持ちで、疲れや雨の日に起こりやすい。月経前にも頭痛が起きる。また、疲れやストレスでめまいも起こる事がある。体重を減らしたいが食事を減らしても痩せない。月経前はむくみが強くなり、体重も増える。お腹の張りも起きる。月経周期は33~35日くらい、月経痛はあまり気にならない。腰はだるくなる。夜の足のむくみ、朝のまぶたの腫れも気になる。甘い物が好き。油物で下痢する。
処方
全周期にわたって、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)+川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)+プラセンタ製剤
経過
服用1ヶ月後、頭痛が軽くなっている。
服用2ヶ月後、頭痛の頻度が減っている。少し体が軽くなっているように感じる。
服用5ヶ月後、自然妊娠。
頭痛や妊娠の体調も心配とのことで、妊娠を安定させ体調を整える漢方薬を服用していただき、無事元気な女の子を出産。
その後、ご希望により産後の体調を整える漢方薬を服用を続けていただいています。
静岡県伊豆の国市古奈426-6
漢方相談 明正薬局
薬剤師・国際中医A級 福本哲也