私ども明正薬局では、不妊症の漢方的なタイプを大きく7つに分けて、それに合った治療を行っています。
今回は、不妊症のタイプで相談の多い貧血・体の虚弱タイプ(気血両虚)をご紹介します。
目次
気血両虚(きけつりょうきょ)とは、貧血・めまい・暑さ寒さに弱い・胃腸が弱いタイプのことです。
子宝に恵まれるためには、子宮や卵巣の働きが整って、女性ホルモンの分泌も正常であることが大切です。
子宮や卵巣がしっかりと働くためには、血液から十分な栄養と酸素が届けられることが重要です。
血液の栄養・酸素が届かない理由には、次の2つが考えられます。
貧血・虚弱タイプの不妊症の方は、血だけでなく気も不足している場合が多いのです。
「気」とは人間の生命活動にとって不可欠なエネルギーやその働きをさします。
気は、
などの働きを持っています。
「血」とは、西洋医学でいう「血液」だけではなく、体にとって必要な栄養や潤いの作用もさします。
気血の不足の原因は、もともとの体質が弱い、過労がひどい、慢性的な睡眠不足、無理なダイエットなどがあります。
気血の巡りが悪いと子宮や卵巣に十分な栄養を供給することができずに、月経周期の乱れ、卵胞の発育不良、子宮内膜が薄い状態となり、なかなか妊娠できず、やっと妊娠しても流産を起こしやすい状況です。
などの月経周期と関係する症状以外に、以下のような気の不足と血の不足が起こります。
気は、体内のエネルギーですので、気が不足することでエネルギー不足の症状がでます。
エネルギー不足は、何日か食事ができなかった場合の体調を想像していただくと良いと思います。
他に、気の不足は胃腸の消化機能を落とすため、
などを起こします。
血は体に潤いと栄養を与える働きを持ちます。
したがいまして、血が不足すると栄養不足・潤い不足の症状が起きてきます。
血が足りないと卵巣が質の良い卵胞を育てることができません。(排卵がうまくいかない→受精できない)
また、子宮内膜を厚くすることもできません。(受精卵が着床できない→妊娠できない)
それによって、
なども起こします。
また、全身症状としては
などを起こします。
それぞれ、以下のような症状に効果が期待できます。
人参当芍散(にんじんとうしゃくさん)
帰脾湯(きひとう)
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)
不妊症の漢方相談は、伊豆の国市以外に伊豆半島全体や三島、沼津、静岡、横浜、名古屋などからも患者さんが相談にいらっしゃいます。
また、メール相談により、北海道から九州・沖縄まで漢方薬を発送しております。
【症例1】33歳女性・静岡県伊豆の国市在住・不妊歴2年・妊娠歴0回・身長161cm・体重43kg・会社員
病院で黄体機能不全・排卵障害と診断され、1年間、排卵誘発剤や黄体ホルモンの薬を服用したり、人工授精を行うも妊娠せず、返って月経周期が乱れ、体調も良くないため、通院を中止しました。
体調を良くすることを目的として漢方薬の服用を希望して、明正薬局に来局されました。
症状
もともと月経周期が長い(34~40日)、月経期間は3日間(3日目の出血はごく少量)、頭のふらつきや立ちくらみがよく起きる。週末になると疲れが溜まり、よく頭痛が起きる。寝ても疲れがとれない、食欲にムラがある、顔色が悪い、肌や髪がかさつく、冷え症で冷房に弱い、など。
処方
全周期にわたって、十全大補湯(じゅぜんだいほとう)+参茸補血丸(さんじょうほけつがん)
低温期-月経4日目から排卵までヴァイタルゲン(牡蛎肉+クマザサエキス)を併用。
高温期-高温になってから月経がくるまで参茸補血丸(さんじょうほけつがん)を併用。
経過
服用を始めて、2日間はなんとなく胃もたれを感じたが、その後は、問題なく服用できました。
服用1ヶ月後、体のだるさやふらつきが改善してきています。
服用2ヶ月後、体が温まる感じで、漢方薬が効いているのを実感します。
服用3ヶ月後、月経周期はまだ36日と長かったですが、月経の量が増えて3日目も出血がしっかりありました。
その後、体調に応じて血行改善薬を追加する時もありましたが、基本的な漢方薬は同じ処方を継続。体重も2kg増えました。
月経周期は33日~35日で、排卵するのに時間がかかっているようですが、以前はほとんど無かった排卵頃のオリモノがおりるようになってきました。(排卵頃のオリモノは、卵胞が成熟した証でもあり、大切です。)
服用8ヶ月後、月経がなかなか来ないので検査薬を使用して妊娠を確認。
自然妊娠ができて、とても喜んでくださいました。
【症例2】36歳女性・静岡県伊豆市在住・不妊歴4年・妊娠歴0回・身長152cm・体重48kg・自営業
病院で不妊治療(人工授精4回、顕微授精2回)をしたが妊娠できず、友人の紹介で明正薬局に相談。
症状
月経周期は28~35日、月経痛はあまりない、月経期間は4~5日間あるが、量は少ない、眠りが浅く、よく夢を見る、途中で目が覚めウトウトしているため、朝すっきり起きられない。日中とくに食後に眠くなる。手足が冷えやす、気持ちが落ち込むことある、めまいや立ちくらみがある。腰がだるく痛む、顔色が悪く、目の下のクマが気になる、など。
処方
全周期にわたって、帰脾湯(きひとう)+紫煌珠(プラセンタ製剤)
低温期-月経4日目から排卵まで亀鹿仙(きろくせん)を併用。
高温期-高温になってから月経がくるまで参茸補血丸(さんじょうほけつがん)を併用。
経過
服用1ヶ月後、すこし眠りが深くなった気がする。朝の目覚めも良くなっている。
服用2ヶ月後、気持ちの落ち込みが減る。
服用3ヶ月後、体調は良い感じ。月経の量は相変わらず少ない。。
その後、体調に応じて血行改善薬を追加する時もありましたが、基本的な漢方薬は同じ処方を継続。体重も2kg増えました。
月経周期は33日~35日で、排卵するのに時間がかかっているようですが、以前はほとんど無かった排卵頃のオリモノがおりるようになってきました。(排卵頃のオリモノは、卵胞が成熟した証でもあり、大切です。)
服用8ヶ月後、月経の量が増えてきたようだ。
服用10ヶ月後、3度目の顕微授精にて妊娠。
漢方薬で体調を整えていくことで病院での不妊治療の効果が高まります。
静岡県伊豆の国市古奈426-6
漢方相談 明正薬局
薬剤師・国際中医A級 福本哲也
漢方薬は、しばらく続けることが重要です
不妊症の周期療法は長年赤ちゃんを望んでいるご夫婦にとって、従来の漢方治療以上に期待がもてる治療法ですが、すべての不妊症の方にすぐ使えるわけではありません。
無月経、生理周期があまりにも不定の方は、まず、ある程度生理の周期を整える必要があります。
また、子宮や卵巣の炎症が強い場合にも、そちらの治療を優先して行う必要があります。
以上が周期療法の大まかな説明ですが、なかなか赤ちゃんが出来ない場合は女性側だけの問題という場合は少なく、男性側にもなんらかの不調がある場合が多いので、男性の精子(数や活動率)の状態を調べていない方はできれば一度調べられることをお勧めします。
実際の治療では、どちらか片方の方だけ、漢方治療をするよりも、ご夫婦ふたりでそれぞれにあった漢方薬を服用する方が妊娠率は高まります。